終身雇用が崩れつつあるとはいえ、初めて就職した会社で一生勤めあげるという人がまだまだ多い。
でもそれって本当に幸せなことなのか?1つの会社しか知らないのに、その会社が自分に適した会社だなんて言えなくない?
だって良いかどうかを決めるには、比較対象がいるじゃないか。例えば、最後の晩餐で何を食べたいかと聞かれたら何と答える?
寿司、カレー、焼き肉などあるだろう。
ではなぜその料理を最後の食事に選ぶのか。
なぜ他の料理ではない?
それはあなたがいろいろな料理を口にしてきた経験があり、その中で最も自分の嗜好に合致したモノを選んでいるからだ。
この思考プロセスを振り返ると、自分が「これが一番」と思う決断をするためには、いくつかのものを比較していることがわかる。
寿司、おでん、肉じゃが、さんまのかば焼きなどいろいろ食べてきたからこそ、その中で一番おいしいと思える寿司を選べるのだ。
料理を全く知らず比較対象がなければ、最後の晩餐に選ぶのはママのおっぱい一択になる。
仕事でもそのはず。
最初に就職した会社が一番自分に合ってるなんて信じる方がおろかだ。
他の会社を知らないのに断言できるわけがない。
やってみないとわからない
もちろん、
「大学生の1年間を自己分析と企業研究に費やし、最も自分が納得できる会社に入った。だからこれ以上の会社はあるはずがない」
という人もいるだろう。
そうであれば確かに最も納得できる会社に入ったとは言えるだろう。
しかしその選択が自分にとって理想的かどうかはわからない。
具体的な仕事内容もわからないうちに、想像で「こんな仕事なら楽しそう」と考えているだけなのだから。
仕事以外でもそうだが、自分が何に適性を感じるかというのは、実際にやってみないとわからない。
予想と実際が大きく違うことなんてざらにある。
バイトは何個目が一番楽しかった?
例えばバイトを例に考えてみよう。
就職とは働くという点で大きな共通点があって例としてもわかりやすいだろう。
あなたは今まで何種類かバイトをしたことがあるだろうか。
もしイエスなら、何個目のバイトが一番充実していただろうか。
初めて働いた1個目のバイト先が1番良かったという人もいる。
2つ目のバイトが一番楽しかったという人もいる。
3つ目、あるいは4つ目以降のバイトが楽しかったという人も当然いるだろう。
そう、1つ目の職場(バイト先)が一番楽しいとは限らないのだ。
人生で初めて働くということで、最初のバイトはそれなりに時間をかけて選ぶもの。
アパレルショップで働きたいとかカフェで働きたいと夢を温めていた人も、ようやく夢をかなえられるチャンスだ。
それでも期待外れに終わることはよくある。
思ってたほど楽しくないとかやりがいを感じないもの。
期待が高すぎるがゆえにそのハードルを越えられなかっただけかもしれないが、それでも軽い失望はある。
そんな中でフラッと別のバイトを始めてみると、そっちに夢中になったりする。
私の場合、幼いころから教育に携わりたくて大学進学と同時に塾でバイトを始めたが、塾長と合わなかったりして全く楽しくなかった。
バイトに行く頻度も減ったために別のバイトで生活費を稼ごうと思ったとき、まかない飯というものをを食べてみたいというだけの軽い気持ちで和食料理屋で働き始めたのだが、これが大成功。
メンバーやお客さんに恵まれ、接客業も面白く、とても充実したバイトになった。
その後いくつかバイトをするも、最も働いて楽しかったバイトは、2つ目のバイトだった。
働いてやりがいを感じられるかどうかは、いくら考えてもわからない。
そして実際にやってみることでしか自分に向いている仕事はわからないのだ。
社会人として一般企業で働くことになっても条件は同じだ。
その企業に少なくともある程度の魅力を感じて入社を決めたのだろうが、あなたが一番輝ける職場がその会社であるとは全く言えない。
というかその会社でない可能性のほうがはるかに高い。
他にもいろんな業種、職種の仕事があって、それぞれの仕事で、「この仕事が一番だ!」と思える可能性があるのだから。
転職によって比較ができる
もちろんすべての職種・業種を試すなんてことは非現実的である。
それでも数種類に挑戦することはできる。それを可能にするのが、転職だ。
仮に1度転職をすれば、2つの職場・職業を知ることができる。
複数の職場で働いた経験があれば、職場や業務内容を比較できるようになるから、ここで初めて客観的に仕事を評価できるようになる。
「1社目でタイムカード切った後も働いていたのは異常だった」
「1社目と違って2社目は人間関係が悪いぞ。1社目はいい人が多かったんだなあ」
などなど。
適性のある仕事を探すなら、転職するのが合理的
だから、仕事で幸福感を得たいなら、数回は転職するのが理にかなっている。
最初に勤めた会社で一生を全うするのは、「どうかこの会社がおれにとって最適な職場であれ」と祈ることしかできず、さらなる好条件を追求することはできない。
一方で1度でも転職をすれば、それぞれの職場のことを冷静に見ることができる。
万が一転職に失敗したと感じたとしても、1社目と2社目の経験があるから、次は自分が大事にしたい軸と重視しない項目をハッキリさせたうえで転職できるから、より理想に近い転職ができるはずだ。
転職を重ねるほど次の転職が難しくなるかもしれないが、理屈の上では転職を重ねて経験値を積むことで、どんどん自分が輝ける仕事に近づいていける。
まとめ
だから、新卒採用された会社で定年まで勤めあげるのは、むしろもったいない。
他のチャンスをみすみす見逃しているわけだから。
今の大学生の就活は、まだ最初に入った会社で定年まで勤めるのが前提なので、基本的にはその1社しか実情を知る機会がない。
しかしバイトで考えると、3つも4つもバイトの経験があることはよくあるので、やりがいのある仕事を見つけるには数を打つしかない、という説も納得してもらいやすいだろう。
就職もバイトと何ら変わりはない。
数を打って試せば試すほど理想の仕事に出会えるはずなのだ。
「2つ前の仕事が一番楽しかった」と振り返るなら、またその職場かその仕事ができる他の職場を探せばいいだけ。
だから、自己実現を目指すなら転職は合理的な選択である。
今の職場や仕事に少しでも思うところがあるならば、我慢することなく積極的に転職すればいい。