「理系の大学・大学院での研究」にどんなイメージをお持ちだろうか?
学生は今まで誰も研究したことのないほど専門的なテーマを扱うことになるので,
特殊な装置を使ったり珍しい薬品を使ったりする機会が自然と多くなる.
そういった特殊な道具を使うには当然特殊な知識が必要なのだが,
その知識が抜けていたりどんな問題が起こりうるかを把握していないと,最悪な事故が起こる可能性もあるのだ.
私自身,うっかり自分や他人の生命を脅かしかねないミスをしてしまったこともある.
悪夢が繰り返されことのないよう,私が研究室生活でやらかしたヤバいエピソードを紹介する.
劇薬「フッ酸」の恐ろしさ
私は研究で「フッ酸」という薬品を使うことが多かった.
化学式はHFであり,非常なシンプルな構造をしている.
そのため,中学校で周期表と一緒に学んだ人も多いだろう.
理系学生なら中学や高校で一度は化学式を見たことがあるはずだ.
しかし,このフッ酸,構造が簡単で親しみやすいクセして,相当ヤバい薬品なのである.
ちょっと触れただけで死に至ることもある.
同じくフッ酸を扱っていた友人に言わせると,
「フッ酸はカルシウムと反応するから,フッ酸に触れると皮膚から浸透して骨に向かう.
だから,一度付着してしまえば水で洗っても手遅れ.
そしてフッ酸が骨に到達すると,骨を石化させてその部位が壊疽する.
そのため腕や指に付着してしまえば切断しなければならない.
付着した場所が悪いと死に至る」
らしい.
調べてみると,フッ酸に侵された指を切断した事件が出るし,なんなら死亡事故となって全国ニュースとなったケースもある.
ガチで取扱注意の薬品なのだ.
みんな,フッ酸には全身全霊の注意を払ってくれ!
できるだけ近づくな!
「フッ酸出しっぱなし」事件
フッ酸取り扱い時の厳重なルール
フッ酸は相当危険なので,研究室内でも使用する際にも厳重なルールが決められていた.
フッ酸は鍵付きの薬品庫で保管されている.
その薬品庫を開けるには教授がいる部屋にカギを取りに行く必要がある.
また,使用したらすぐに薬品庫に戻し,鍵を返却しなければならない.
これだけでもけっこう面倒くさいのだが,使用前の準備や使用後の片づけの手順も慎重を期しているため,とても複雑なものになっている.
やらかし:フッ酸をしまい忘れる
ここで私のやらかしを一言でいうと,
「フッ酸をしまう」という工程を忘れていた.
鍵付きのロッカーに戻してからカギを返却しなければならないのに,
フッ酸をしまわずにカギをかけて返却していたのだ.
そして数時間後,実験室に入ってきた教授によって出しっぱなしのフッ酸が発見される.と言う感じ.
当然すごく怒られた.
これは怒られて当然である.
言い訳:だって手順が煩雑だもん...
フッ酸出しっぱなし事件では2億%私が悪いのだが,
ヒューマンエラーを起こしてしまった真の原因を考えると
「フッ酸を扱う手順が複雑すぎた」
からだと思う.
あれもやってこれもやって次はあれもやってと,教官室や実験場,薬品庫を行ったり来たりしなければならないのだ.
少し考え事をしているだけで,工程1つくらい簡単にすっ飛ぶよ.
当時はちょうど大好きだった彼女に振られて傷心中だったしな.
まあ,手順が複雑なのは安全上仕方のないことだから,やっぱり全部私が悪い.
むしろ安全対策がしっかりしていたからこそ,フッ酸の出しっぱなしで済んだのかもしれない.
安全対策がもっとゆるゆるだったら危機意識もゆるゆるになり,「フッ酸で床が水浸し事件」にまでなっていたかもしれない.
まとめ:身を守るための知識はつけておけ!
幸いなことに,「フッ酸出しっぱなし事件」での被害者はいなかった.
本当に良かった.
研修室の他の学生もフッ酸の危険性は十分知っていたから,出しっぱなしのフッ酸を見つけても迂闊に触れたりはしなかっただろう.
事件の張本人である私が言うのも変だが,
危険なものを危険と判断できるための知識は必要である.
大学レベルの研究でもかなり危険な道具や薬品を使うことはあるから,身を守るための知識だけはほんとに身に付けておいてくれ.
自分は安全でも,今回の私みたいに他人が危険な行動をとることもあるからな!
ほんとすみませんでした.
そして,ヤバいことをやっている仲間を見つけたらそっとアドバイスして助けてやってほしい.
教授に知られる前に学生だけで解決するというのも,研究室生活では極めて重要だ.
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